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2014/08/07

山本美香という生き方 (山本美香、ビデオジャーナリスト/映像記者)

Advantage : 勇気/情熱/不屈の精神/命、病気について
Key : 本/女性/日本/映像記者/ビデオジャーナリスト/国際協力/イラク戦争/シリア内戦

Info : 本


 山本美香 1967 - 2012年8月20日。
シリア内戦の取材中、アレッポにてシリア政府軍の無差別砲撃を受けて死亡。
イラク戦争など、世界の紛争地を精力的に取材した女性ジャーナリスト。

 これは本人の山本美香さん、公私共にペアであった佐藤和孝さんの目線で、取材協力契約を結んでいた日本テレビのスタッフによってまとめられた山本美香さんのジャーナリストとしての記録です。
戦地の緊迫感と悲惨さを、ジャーナリストの使命、メディアの役割を見据えながら、現場の真実を内側から、客観的に描いています。その点にプロフェッショナルと信頼を感じ、読みやすいと思います。

山本さんと佐藤さんは、自分達で企画、取材、編集までを一貫してやり遂げる、時にはビデオカメラ1つを隠し持って最前線で生の情報を伝えることができるビデオジャーナリストというスタイルを確立した先駆者です。戦争で一番虐げられるのが弱者~女性、子供、老人~であることに怒りを感じ、隠された都合の悪い真実を伝えなければならないという思いが、山本さんのジャーナリストとしての転機、原動力であったように思います。
取材相手の子供達と自然に打ち解け、イスラム圏の女性にアプローチできるのは女性だから、女性ジャーナリストだから捉えられる真実を届けなくては、最前線での取材にこだわる信念がありました。
この点で山本さんの勇気と行動は高く評価されるべきものだと思います。


 一番印象深かった言葉は、山本さんのモットー “前を向いて歩きながら考える” です。

戦場という非日常の中、目の前で人が死にかけていたら。正しい答えはあるのか?
その人を助ける、自分の身の安全を確保するために逃げる、カメラを回し続けるのか?
ジャーナリストとして届けた現場の真実は、見た人はどう感じるのか、後世でこの戦争の歴史的意味はどう位置づけられるのか?
考えても今は判らない、だから真実を伝えるだけ、という結論に至ったゆえの言葉でしょうか。

 では、何故、真実を伝えることに命をかけるのか?
戦争や紛争の勃発を避けられるような、政治的な大きな力はなくても、メディアが伝える真実によって、その悲惨な状況を止める力になると希望を持っているから。
武力で言論を封じることはできない、メディアの力を信じ、証明するために、ジャーナリストとして戦っているから。。。。と語っています。

 内容は、山本さんの大きな転機となった2003年のイラク戦争勃発時のルポが中心です。
これは先に出版された本“中継されなかったバグダッド”と重複していますが、それ以外の部分、一度は主婦だったけれど仕事への情熱を捨てがたく、復帰して離婚した経緯や、戦争とジャーナリズムの教育活動に熱心だった様子なども含まれ、山本さんの全体像を知るのに良い本です。

 平和ボケ気味の日本において、戦争、ヒューマニズム、倫理観に悩む時、
仕事への情熱、使命感について考えたりする若い世代、
45歳で亡くなった山本さんと同世代の方が自分の歩みと照らし合わせてモノ思ったり、、、、
そんな皆様にお勧めしたい本です。


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