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Viva La Vida ビヴァ ラ ビダって、「今を生きる」 を感じること。 実在人物の軌跡、考え、心、光と闇に触れて感じるスペース ☆ 私的セレクト図書館。 

2013/12/29

海を飛ぶ夢 (ラモン・サンペドロ、尊厳死を選んだ一般人)

原題 : MAR ADENTRO
Advantage : 命、病気について/心の弱さ、闇について/幸福の意味
Key : 映画/男性/海外/尊厳死 

Info :    
     

海を飛ぶ夢 (翔年たちへ)


 25歳の事故以来、30年もの間、首から下が麻痺した生活を送りながら、自らの生、自由、幸福について考え続けて出した結論は、尊厳死でした。
 これは実在の人物、ラモンによる手記と記録映像を元に作成され、スペイン映画らしく、生身の人間の根源を直視したテーマが、心を抉るように迫ってきます。
人間の老い、性、妬み等のドロドロした隠したい部分、その中でも尊厳と死は重く、これからの高齢化社会、福祉問題を生きていく上でも避けられない大きなテーマでしょう。
 今回、“誰の心にも棲むもの”として切実に、実話として真っ直ぐにとらえ、“内なる海”(原作タイトル“MAR ADENTRO”の直訳)を映画表現として挑んだ、アメナーバル監督(スペインの若きヒッチコックと呼ばれる)と、名優ハビエル・バルデムのコンビに、拍手を送りたいと思います。
涙が止まりませんでした。

 ラモンは25歳の時、海の浅瀬に飛び込んで脊椎を損傷し、首から下が麻痺した寝たきりの生活を送っていました。その後、暫くは恋人を拒絶し、将来を悲観して苦しみますが、そのうちに、家族や周りの人々の温かい理解と助け、生来の明るい性格で、毎日を楽しく過ごそうと努力していました。そんな生活も20年以上経った頃、尊厳死を求めて裁判をおこすのですが、敗訴します。最後には理解者の協力を得て、自ら尊厳死を全うします。協力者の誰も罪に問われないように、一節毎に分担して準備をし、最後にビデオにメッセージを託してから死を実行しました。

 ラモンは、周りの友達に囲まれておしゃべりしたり、詩を創ったり、毎日が楽しいけれど、このまま生き続けることは幸せではない、心は自由でも体を伴わずに自己実現ができない、命を終わらせることの権利を主張していました。
 濃いカトリック色を背景とするスペイン社会では、障害者や弱者への救済や受け止め方は、日本とは異なって温かく、深く根付いていると感じ、それが一層問題を複雑にしています。
それゆえ、ラモンが何度も繰り返し言っているとおり、居心地は悪いものではなかっただろう、自己の生の中で求めるものを実現できるか、生きることの権利=生きることは義務ではない、について考え抜いた上での結論だっただろうと思います。

 「体はベッドに縛り付けられているけど、心は、精神は自由だ」と言っていて、その視覚的表現として、ラモンに扮する男優ハビエル・バルデムが、窓を開け放ち、バサバサと広い世界に飛んでいく映像があります。まるでピーターパンと空に飛び出す子供たちのように、その目には喜び、好奇心が映り、自由に空を、海の上を飛び回ります。
このシーンが印象的で好きです。現実への絶望感を哀しく、美しく、スペイン映画的に表していると思います。

 最後に、実際に自らが命を絶つ直前のビデオレターが流されます。
周りの人々への愛と尊厳死を選んだ主張が、メッセージとして見る者に語りかけます。

貴方はコレを見たとき、どう感じるでしょうか。

芸術分野

<美術>
なんのために生まれてきたの? (やなせたかし、漫画家/作家)

超・美術館革命 (蓑 豊、金沢21世紀美術館特認館長)

さかな の なみだ (さかなクン、お魚イラストレーター

<建築>
建築家、走る (隈研吾、建築家)

ガウディの影武者だった男 (ジュジョール、モデルニスモ建築家)

<音楽>
鳥の歌 (パブロ・カザルス、チェロ演奏家・教育者・平和活動家)

バックビート (スチュワート・サトクリフ、もう1人のビートルズ)

愛しのフリーダ (フリーダ・ケリー、ビートルズを支えた誠実な仲間

<映画>
マイケル・ムーア、語る。 (マイケル・ムーア、ドキュメンタリー映画監督)

ガウディの影武者だった男 (ジュジョール、モデルニスモ建築家)

Advantage : 情熱/幸福の意味/挑戦
Key : 本/男性/バルセロナ/モデルニスモ/ガウディ/ジュジョール 

Info :

ガウディの影武者だった男―天才の陰で忘れ去られたバルセロナ建築界の奇才


 スペイン、カタルーニャ地方のモデルニスモ建築家、ジュセップ・マリア・ジュジョール・ジベルト。
ガウディより27歳若い1827年生まれのジュジョールは、建築学校の学生時代にガウディと出会い、才能を見出された“色彩の芸術建築家”です。ガウディが最も信頼した協力者です。

 タイトルから、ガウディの名の下に表舞台に出られなかった若き才能や葛藤、師弟関係をイメージしていましたが、これは異なる才能を認め合った2人の自由な創作、刺激しあった造形と共同作業について書かれたものです。
ガウディの、時にはモデルニスモ時代の担い手ドメネクやカダファルクの作品と比較しながら、ジュジョールの世界を探訪していくうちに、その独創的な魅力に取り込まれてしまいます。
 特に前半は直接的な人物像よりも、ジュジョールの眼差しから学術的に検証、考察される作品の記述が多く、建築分野に関連して、芸術絵画、デザイン、カタルーニャ文化と歴史に興味がある方にも読みごたえがあると思います。

 ガウディの代表的作品と認識されている建築の中には、ジュジョールによる創作部分が数多く存在し、光っています。
 サグラダファミリアの天蓋・カテドラル背面の壁画
 カサ・バトリョの鮮やかな外壁
 グエル公園の波状ベンチ、カサ・ミラのバルコニー装飾等です。
ガウディが自分に足りないと感じていた色彩感覚や独創性をエッセンスとして付加し、建築作品全体のバランスを補強して完成度を高めるための必要なファクターであり、制作者独自のセンスと采配に任されていた“遊び”のパーツです。
大家のガウディが口を出すことも無く、信頼と協力で成り立っている関係、ジュジョールは協力者なのです。

 この本を読んで、3つのポイントに注目しながら2人の作品を見ていくと、気づく点が多く、面白いと思いました。
異なる才能、共同作業中のインスパイア「ガウディの中のジュジョール」「ジュジョールの中のガウディ」、其々の私生活が作品に与える影響についてです。

2人の才能とは?

ガウディ
 幼い頃から自然を熱心に観察していた。モチーフに海、水、岩山などが多い。
作品は想像力の産物ではなく、冷静な観察力によって見出した形態がベース。
全体的に計算されつくした、完全主義の美。

ジュジョール
 観察して、まず描いてみることを常としていた。
瞬間のインスピレーション、心象を自分の手を動かすことで心の中に刻み込もうとするよう。即興的。
想像力の産物、個々に芸術作品の1つとしての意味が高い。大胆。

ジュジョールらしい作品とは?
 1910-20年代にかけて、バルセロナ郊外のサン・ジュアン・デスピという小さな町の専属建築家として没頭した、76もの作品に見ることができます。
1909年の“悲劇の一週間”(労働者階級の暴動)以降、資金潤沢で派手好みのブルジョワのパトロンがなりを潜め、カタルーニャ主義の強い表現が牽制された社会、政治、経済状況下のバルセロナから離れた、自由な創作時代です。
 ここでの代表作にマシア・ネグラ(シュールリアリズム的な絵画を自由奔放に描いている)、ラ・クレウ(特殊な十字架の形を持つ塔、卵の塔と呼ばれている)等があります。
小規模で資金の限られた制作は、新たなアイデアや素材(身近な生活用具等)を見出し、思う存分にコダワリを貫くことができた、楽しさを見ることができます。

 ブルジョワ趣味の仕事を請け負う処世術と自分の理想の間で悩み、次には対照的な、本来貧しい庶民の心の拠り所である“神の家=サグラダファミリア”の理解と実体化、重責に苦しんだガウディは、生涯独身で、最後の時を神の精神に捧げて暮らしました。

 一方、庶民文化に根ざした建築美を追求したジュジョールは、状況によって奇抜な才能をコントロールしたり、父親と同じように教鞭にも立つ社会性にも恵まれており、愛に満ちた家庭生活を送りました。

 天才、富と名声、愛、、、、幸福の形について考えさせられます。

 とにかく、ガウディとジュジョール作品の写真、実物を提示しないと、内容と感情が旨く表せてない気がします。サン・ジュアン・デスピにずっと行ってみたいと思っていましたが、本当に探訪しなくてはと思いました。

2013/12/23

なんのために生まれてきたの? (やなせたかし、漫画家/作家)

Advantage : 勇気/情熱/不屈の精神
Key : 本/自伝/男性/日本/漫画家/作家/アンパンマン 

Info :  http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-78300-0

何のために生まれてきたの?

 アンパンマンの生みの親、やなせたかし氏の93歳までの人生の歩み、思いが語られている自伝です。これは、数ヵ月後の2013年10月13日に94歳で亡くなるまで、輝き続けた命の最後のメッセージです。
生きる悲しみと喜びに向かい合う言葉は、一層深く、優しく感じられ、波のように心に打ち寄せてきます。

 「なんのために生まれて なんのために生きるのか」
子供には大きくて、難しすぎると思われる、アンパンマンのテーマ曲。
東日本大震災の後に、最も多くリクエストされた曲でもあります。
 その誕生の背景を読むと、私の前に、リアルなヒーロー“アンパンマン”が出現し、理屈抜きで純真な子供たちに愛される理由が解ったような気がしました。
 愛と、勇気と、何か、があって、人々に希望を感じさせるのです。
その何かとは、人生の大きな2つの経験に裏づけされた力で、やなせ氏が、最後まで現役で、元気に生きぬいた意思の源でした。

その2つの経験とは?

・ 長い下積み時代
  40代まで代表作が無く、60代でアンパンマンが大ヒット。
  「人生に無駄なことは何一つ無い。やり続けることが大事。」

・ 戦争体験
  弟を失う。食べ物が無い時代。正義について考える。

 この経験を背負って生まれてきたアンパンマンは、なるほど、世界の美しい部分だけでなく、生きることの現実を素直に表している、“弱いヒーロー”だと気づきます。
弱いけど、正義の心は世界一強いヒーローの姿。これがストレートに心に響いて、多くの人を惹きつける理由なのでしょう。

顔を飢えた人に食べさせる
・・・食べ物を分け与えることは、何時でも何所でも、世界の正義。でも、正義を行うには、自分が傷ついたり、犠牲が伴う。

傷つきやすいヒーロー
・・・顔が濡れるとピンチ。すぐにジャムおじさんに助けてもらう。

素手で戦う
・・・弱いけど、絶対武器は使わない。使命は、食べ物を分け与えることだから。

戦う相手は悪
・・・ミクロのバイキンは目に見える姿を持つ敵ではない。戦争や病気などの悪の象徴と戦っている。

 アンパンマンって深い、深いです。
やなせたかし先生、愛と勇気をありがとう。素敵なメッセージをありがとう。

2013/12/21

世界がもし100人の村だったら (推定原文著者ドメラ・メドウズ、生物物理学者)

原題 : If the world were a village of 100 people
Advantage : 社会貢献/友情/幸福の意味
Key : 本/世界/環境問題/ネット・ロア

Info :

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 これは、インターネット・フォークロア、“ネット・ロア”と名付けられ、グローバル時代を反映して生まれてきた、今も発展中の民話です。
「世界がもし100人の村だったら」の元は、ドメラ・メドウス氏の「ザ・グローバル・シチズン」(1985年著)の一部と推測されています。推測というのは、ネットで拡散されていく過程で、1000→100人、序章や結びに感想等が加わっていたり、原文とは詳細が異なる様々なバージョンが存在し、今も変化し続けているからです。
 メールが転送される度に、受信者の気持ちが積み重ねられ、一つのメッセージへと結実していく、、、恐らく、世界は1つという善意と責任感の気持ちで。例外的なジャンルではありますが、ここで“沢山のヒトの気持ち”を重要視し、今回紹介させていただきました。

絵本の内容は、100人という身近なスケールに当てはめて、世界の環境問題や社会問題を提起し、皆で考えて救おうと呼びかけるものです。

~結びの文抜粋~

もしもたくさんのわたし・たちが
この村を愛することを知ったなら
まだ間に合います
人びとを引き裂いている非道な力から
この村を救えます
きっと

 子供にも大人にも読んでほしい絵本だと思います。皆、世界市民の1人として。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ (ミュージシャン)

原題 : MARKETING LESSONS FROM THE GRATEFUL DEAD
著者 : デイヴィッド・ミーアマン・スコット、ブライアン・ハリガン
Advantage : 情熱/バイタリティ
Key : 本/海外/グレイトフル・デッド/マーケティング/環境問題 

Info :

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ


 グレイトフル・デッド(コレよりGD)って、ヒッピーでラブ&ピースのバンド、あのGDでしょ?
それとマーケティングって、、、活動期間も1965~1995年じゃなかったっけ?
先ず、このタイトルに面白センサーが反応、昔からデッドベアのキャラクター好きということもあり、読んでみました。

 二人の著者、 デイヴィッドとブライアンは、エコノミストで企業家、熱烈なデッドヘッズ(GD信者)です。GD愛と、ユニークな策略を感じさせる二人のストーリー展開も絶妙で、どこから読み始めても良い3つのチャプターから成り、赤字の重要ポイントマーク等は簡潔明瞭。GDポリシーの具体例を検証しながら、彼らの自由な精神を反映し、共感度が高い、楽しい読み物に仕上がっています。
ビジネス本以上、現代マーケティング実用書としての内容と完成度は、良い意味でショッキング、一気にGDワールドに引き込まれる感じです。
見た目も、普通であるはずが無いという期待通り、カバーや内ページは、シンボルのポップなイラストとカラー、書体が踊るデザインです。こんなの見たことない、コレクションものです。

 この本で検証されているように、1965~95年の早い段階から、現代のSNS手法を見事に実践していることが解ります。

・ 歴史的な大ヒット曲は無いのに、何故30年以上もファンの心を掴み続けているのか?
・ 当時の業界常識をくつがえし、活動の中心はライブで、ライブ録音とグッズ制作フリーOK。
  どのような仕組みで儲けているのか?
・ 2009年よりビジネスモデルとして検証され始めたのは何故か?今、注目される理由は?

 それは、企業の価値とブランドは、ユーザー(ファン)によって造られる=企業の押し付けではないこと、ファンとの対等な仲間意識と立場=共存共栄、徹底したファンへのケアと満足度を意識してきたことが大きいと思います。
彼らの一貫したボランティア活動=企業CSRも特筆すべき点で、一層の信頼関係とブランディング効果を高めたと言えるでしょう。

 音楽への情熱を貫く。
自分たちがやっていたことが、本当に好きだった。

GD魂は、やっぱりコレです。多くのデッドヘッズを魅了する根源は。

 コレが意図せずとも、経済、社会、音楽の分野を融合し、今も影響を及ぼす社会現象に結実したのだと思います。
 ITCとマーケティング関係、デッドヘッズ、興味を持った方へ、気になりませんか?
キニナル、キニナル、キニナル、、、読んだら理由が解ります。

超・美術館革命 (蓑 豊、金沢21世紀美術館特認館長)

サブタイトル : 金沢21世紀美術館の挑戦
Advantage : 挑戦/情熱/マネージメント力
Key : 本/男性/日本/美術/リーダー 

Info :

超・美術館革命 -金沢21世紀美術館の挑戦 : ワンテーマ21: 蓑豊


 蓑豊氏、美術史博士。
深い専門知識に加え、世界で活躍してきた自由な視点と経験を武器に、地方都市の新設美術館をプロデュース&マネージメント。記録的な来館者数を誇り、一躍有名になりました。

 新美術館を創る、その土地は金沢城の前であること以外、0からのスタート。
コンセプト決定、ハコとなる建築を考案することから始まる計画進行の様子と思いが、生き生きと伝わってきます。企画や運営論を説くビジネス本というよりは、“蓑氏の新美術館創造大作戦”とでも呼びたくなるような内容で、挑戦、創造の楽しさを教えてくれます。

何故、この金沢21世紀美術館にだけ、人が集まるのか?
地方の現代美術館としては異例の、大きな集客力を保ち続けているのか?

・建築家 妹島和世さんによる丸いガラス建築。
 未来的でユニークな建築と歴史文化的町並みとのコントラスト。新しい試み。

・子供に気軽に訪れてもらう、喜びを与える場所としての役割。
 純粋な子供時代に、心に感動を受けることの大切さ。

・美術館はサービス業であることの認識、努力を続けること。

 正直な感想として、予算の使い方、集客の努力、PR、利益の追求等の取り組み、考え方については、民間企業が当たり前にやっていることも多く書かれていました。
それができなかった今までのシガラミを飛び越えて成功した要因は、市長がこのプロジェクトに蓑氏を抜擢して一任した決断、それから、先ずは妹島さんの建築が世界的にも注目されたことが大きいだろうと思います。

 蓑氏のアイデアと情熱が詰まった本、バイタリティ、パワーをもらえる気がします。

2013/12/20

おにいちゃんのハナビ (一般人の実話、引きこもり)

Advantage : 勇気/家族の愛/心の弱さ
Key : 本/映画/男性/日本/一般人
Info :
    DVD

おにいちゃんのハナビ (朝日文庫)おにいちゃんのハナビ [DVD]

 実話を元にした小説(脚本)、病弱な妹の運命を見守る苦しさ、死に直面した絶望、それから愛するヒトの死を受け入れ、自分にできることを考えて歩き出すまでの、「心の旅」の物語です。
ある一人のおにいちゃん、太郎の、妹ハナを大切に思う気持ち、自分を変えようと歩みだす勇気、“ハナに捧げる花火”を作る姿に感動します。
 そして、その特別な“ハナの花火”が天国に向かって花開いた次に、“おにいちゃんの花火”が、太郎のためにサプライズで打ち上げられます。

 一家がハナの療養のために、東京から移住してきた地、新潟県小千谷市片貝町では、花火祭りに「奉納花火」を打ち上げる風習があります。全ての花火は、人生の節目を祝う気持ちを込めた奉納花火なのだそうです。
 
 二人はとても仲の良い兄弟でしたが、いつも家族、生活の中心はハナという環境で育ち、太郎は自分の本心を言えないまま過ごしてきました。段々と心の歪みが大きくなり、誰にも心を開かない中学、高校生活を送り、ハナの死が避けられない状況になった時に、とうとう心が折れて、引きこもりになってしまいました。
しかし、どんな時も努めて明るく、必死におにいちゃんを励まして、引っ張り出そうとするハナの健気さに心動かされ、始めはハナと二人一緒に、少しずつ外と交流を持とうと動き始めます。
 しかし、ハナは楽しみにしていた花火祭りを待たずに亡くなり、引きこもり脱出のリハビリ中の太郎は、深い悲しみを前向きに生きる力に変えて進む決心をします。そして、“ハナに捧げる花火”を
上げる、その花火も自分で作ると誓います。
 
 引きこもりからの脱出、一大決心だったと思います。ハナのために頑張るおにいちゃんを、そっと見守ってきた人々、ハナの友人等、周りの沢山の人達からの気持ちで、「あなたの頑張る姿に励まされました」というアナウンスで打ち上げられます。
これ実話、泣ける話です。

 一歩踏み出す自分の勇気、それから、ハナと周囲の温かい気持ちが結びついて咲いた花は、心に染みる美しさだっただろうと思います。

2013/12/18

てぃだかんかん (金城浩二、沖縄サンゴ保護活動家)

サブタイトル : 海とサンゴと小さな奇跡
Advantage : 情熱/家族の愛/行動力
Key : 本/映画/日本/男性/環境問題/海/沖縄/人間力大賞

Info :  http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093878890

      DVD

   てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~ [DVD]

 てぃだかんかん(=太陽がかんかん照り)が良く似合う、“美ら海”を取り戻すんだ。子供たちに残すんだ。

 金城浩二さん、生粋の海人。職業コーラルマンとしてサンゴ再生活動に励んでいる。
1998年より、サンゴの養殖に取り組み、2004年に世界初の養殖サンゴ産卵を成功させる。
2007年、人間力大賞等を授与される。
現在も海の種代表、NPO理事長としてサンゴ再生活動中。

 発端は1998年。死んで白化した大量のサンゴを見つけて驚愕した。
この時、調べてみると、1970年代と比べて、沖縄の9割以上のサンゴが消えていたことを知った。このままでは、30年後に世界中のサンゴが絶滅するとも言われていた。しかも、地球の海の約0.2%の海しかサンゴは生存しておらず、沖縄はその貴重な一地域である。

そして、誓う。
 俺が元の海に戻してやる!
今やらなきゃダメだ!
これからはお金じゃなく、自分が死ぬときに後悔するか、しないか。それをモノサシにして生きていこう。
生き物を相手にウソの無い仕事をしていこう。

 うーん、考えさせられる誓いです。

 ここで、Save the earth, Save the ocean!、Act Now!!!と思った人は沢山いるでしょう。しかし、その内の何人が、誰が立ち上がり、Actionしたでしょうか。ダイバー、サーファー、釣り人etc,etc,,,,
 だから、私は金城さんはエライ!と言いたいです。
 そして、前例が無く、今やっていることが正しいのか、否か、先が予測できない状況で活動を継続中。少しずつ前進しながら、活動資金を借金として負いながら、未来に向かっている志に、もう一度エライ!&ありがとう、と言いたい気持ちになりました。

 一般人の金城さんは、0から手探りで活動を始めました。
本書に書かれているように、回り道や詐欺被害、その間に雪だるま式に膨れ上がる借金(活動資金)を抱えたりと、不器用に、でも正直に多難な道を歩んできたことが分かります。
金城さんのピンチを救うのは、いつも、家族の言葉です。“家族が全ての原動力”と言い切れるって、とても素敵だと思います。

「お父さんなら、きっとできるよ。」と、飛び切りの笑顔の奥さん。
・・・・3人目の子供が生まれる直前、仕事を辞めてコーラルマンに転身を決めた時

「海を上等にするお父ちゃんの方がカッコイイ。」と、子供。
・・・・活動資金の借金、生活苦で、サンゴ活動を辞めるか悩んだ時

「家なんか失ってもいい。たとえ家が無くなっても、私も子供たちもお父さんについていくよ。」と、奥さん。・・・・詐欺被害で更に多額の借金を負い、途方にくれて死を考えた時

 こんなこと言われたら、号泣してしまう。そして、ナンクルナイサーって頑張る気力が湧いてきそうです。
 彼の“てぃだ”(=太陽)は奥さんに違いない。“てぃだ”の光に照らされて、これからも輝いてほしいと思います。

2013/12/17

イルカと墜落 (沢木耕太郎、作家/ルポライター)

サブタイトル : 沢木氏、ブラジルで危機一髪
Advantage : 未知の世界/幸せの意味/社会の豊かさ
Key : 本/TV番組/男性/日本/ライター/冒険/環境問題 

Info : http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167209155

        NHKスペシャル 2003年6月22日放送
       沢木耕太郎 アマゾン思索紀行  「隔絶された人々 イゾラド」     



 2001年、NHK番組の取材のために初のブラジルへ、さらに未開のジャングルへと旅立った沢木氏。
ミッションは、文明と未接触のイゾラド(=インディオ)の取材です。
そして、何とジャングルへ向かうために乗り込んだセスナが墜落してしまうのです。

 “窓の外の熱帯雨林がぐんぐん近づいてくる。どうやらこの飛行機は墜ちるらしい”
そして、墜落の瞬間、咄嗟に思ったことは、“マジかよっ”。

 家族や自分の運命のことではなく、取材同行スタッフの口癖“マジ”だったことに、本人も後から驚いたようです。小説のような事件に直面すると、アッという間で、理性的に考える余裕なんて無いのかもしれません。セスナは大破し、死傷者が出なかったのが不思議な程の大事故だったのに、とにかく、全員軽症で何よりだと思いました。

 こんな奇跡の事件の当事者となった沢木氏、相変わらず淡々と、沢木ワールドで語っていきます。生と死は背中合わせ、死は直ぐ隣にあるもの、自分は今までやりたいことをたくさんやってきたから、死への恐怖や生への執着はそんなに無いと気づいた、と経験を振り返っています。

 この物語には、もう一人のKeyパーソンがいます。
ブラジルのジャングル奥地には、未確認、未接触のイゾラド(=インディオ)が相当数いるそうで、ブラジル政府の組織によって調査、管理されています。
その組織のリーダー、ポスエロ氏です。強烈なカリスマ、アクション漫画のヒーローのように豪快で明るく、不屈の精神の持ち主のようで、人間力にグイグイ引き込まれます。

 下記の言葉は、印象的でした。
ポスエロ氏が彼らとの接触、失敗と後悔の中で考え、たどり着いた信じるべきもの。身を尽くすべき理由なのでしょう。
幸せとは何か?自分の立場は?自分がやるべきことは?自分たち文明人は、上から目線で助けたり、守ってあげるヒーローでも、正義でもない。

ポスエロ氏の言葉:

 イゾラドが、イゾラドとして生まれて、そのまま自然に死んでいく。それが一番美しいことだ。
僕はその美学、理想を実現するためだけの理由で、僕の仕事を、任務を行っている。
できるだけ文明に触れさせないことだ。彼らが、あるがままにジャングルで楽しく暮らすことだ。

 イゾラドの数は減少していて、やがて絶滅するのは時間の問題だ。
僕らは、それをできるだけ引き伸ばしているにすぎない。
だって白人がここにやって来てからの所業を考えてごらん、僕らは最後の時間をもらって、彼らにできることをするしかないんだ。


 私はこの取材から完成した番組
沢木耕太郎 アマゾン思索紀行  「隔絶された人々 イゾラド」
を観ていないのですが、それは沢木氏のこんな語りで始まり、終わるそうです。
取材の裏舞台であるこの本の、ポスエロ氏の言葉を重ねるとき、魅惑的なフレーズは一層深みを帯びて響きます。
幸せとは何だ、考えさせられます。

 不思議な話を聞いたのだ。
ある時、2人のイゾラドが忽然と現れた。
近隣数百キロ範囲のイゾラドとは異なる言語と文化を持ち、彼らは何者か、何所から来たのか、まさに忽然と現れたのである。

(アウレとアウラと名付けられた2人の話し声が風に乗って聞こえてくる)
しゃべっているね。
そうだね。あの声が消える時、あの1つの文化も地球上から消えて亡くなるんだ。

2013/12/16

バックビート (スチュワート・サトクリフ、もう1人のビートルズ)

原題 : BACKBEAT
Advantage : 情熱/友情/愛/ビートルズの青春
Key : 映画/男性/海外/アーティスト/音楽/ビートルズ

Info : DVD

バックビート BACKBEAT
 
 蒼い光の色。
例えるなら、冬の朝、どこまでも冴え渡って、悲しくて、優しい。
それでいて、未知の春を待ちかまえるような、凛とした光。
時代x映像x音楽が創り出す、この世界が好きです、真っ先に思い浮かぶイメージが、この色です。

 1960年のビートルズ、リヴァプールでメジャーを夢みていた青春時代の話。
ビートルズの5人目のメンバー、スチュワート・サトクリフのStoryです。

 19歳のスチュは、美術学校で親しくなったジョンに誘われ、一緒にバンド活動を始めます。
メンバーと一緒に飲んだり、喧嘩したり、エネルギッシュに若さを堪能する生活を楽しんでいました。そんな中、巡業で出かけたドイツのハンブルグで、スチュは、生涯の恋人となる女性写真家アストリッド・キルヒヘルと劇的な出逢いをします。

 アストリッドのアートに生きる姿を見ているうちに感化され、自分が本当にやりたいことを見つめなおします。そして、アストリッドと共に過ごし、アートに生きる道を選びました。
元々、美術学校では天才的なアートの才能を発揮していたスチュ、アートよりも音楽に心奪われて活躍していくジョン。
お互いに、自分には無い才能を認め合い、心の中ではリスペクトしあう関係を大切にしていました。しかし、バンド活動が軌道に乗ってきた矢先のこと、其々の強い個性と葛藤がぶつかり合います。ジョンもアストリッドに恋心を抱いていたため、割り切れない思い、友情、夢、気持ちは一層高ぶり、心は複雑に乱れます。

 決別は決定的なものに思われましたが、それでも、バンドがメジャーへの道を掴んだ時、考えに考えたジョンは、スチュを迎えに行くのです。スチュはジョンの気持ちを噛み締めながら断り、直後に頭の腫瘍によって倒れます。
それから21歳で亡くなる日まで、全力でアストリッドへの愛と、アートへの情熱を燃やし続けました。
それは、ビートルズのメジャーレコードを受け取った日でした。

 ジョンの静かな優しさ、仲間への愛を感じます。
そして青春の楽しさ、美しさと残酷さ。

もし、スチュがメンバーとしての道を選んでいたら。
アストリッドの恋人がジョンだったら。

 人生の分岐点て分からない、自分の選択 vs 運命の力。
今を生きることが、運命に働きかけていると思いたい。


関連Info : サントラ 

バックビート

カーネル・サンダースの教え (KFC創業者) 

サブタイトル : 人生は何度でも勝負できる
Advantage : ポジティブ/バイタリティ/七転び八起き/ビジネス哲学/痛快な生き方
Key : 本/男性/海外/ビジネス/実業家/KFC

Info :  http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14181



 ご存知、KFCの顔、カーネルおじさん。
カーネル・サンダース、本名ハーランド・サンダース(カーネルは名誉称号)。

 色んな意味で、こんなにも面白さ満載の、様々な人生の事件(本人的には“チャンス”)を打破しながら進んで来たヒトなんだ、「下町のフェニックスおじさん」と呼びたくなってしまいます。
愛と敬意を込めてです、KFCさんゴメンなさい。 
今まで知らなかった、波乱万丈で七転び八起きの人生、想像以上でした。

初めての仕事をクビになる(10歳)
志願兵になってキューバで戦う(15歳)
吊橋のロープが切れ、車ごと崖下に転落。重症を負う(36歳)
商売敵と銃撃戦 
数度の破産、火事で全焼等
20回以上の転職
無一文の65歳からKFCビジネス起業

 絶対絶命の場面をくぐり抜けて、というか、自ずから好んで突き進んでいく結果のようにも思えますが、その度に自分の哲学と信念をGetしていきます。
 そして、ブレません。
この哲学を徹底する事、徹底する根幹となる個性の頑固さが、顧客と仕事仲間を惹きつけ、ビジネスの成功に繋がったということが解ります。

「神様は、何か特別なことをワシにさせるために、命を救ったのではないか。」

Myルール、10歳で初仕事をクビになった時に誓ったルール
   できることは全てやれ
   やることは最善をつくせ

心のスローガン、ロータリークラブで心を打たれた言葉
   最も奉仕する物が最大の利益を得る
   
4つのテスト、ロータリークラブで学んだビジネスのリトマス紙
   1) 嘘偽りはないか
   2) 関与する全ての人に公正か
   3) 信用と信頼を築けるか
   4) 関与する全ての人に利益があるか    

 これらの哲学徹底を支える、個性、キャラクターを表すエピソードも数多く含まれています。
組織的には不調をきたすほどの公正さ(そのせいで会社をクビになったり)、熱血漢で人情家、かなり口が悪くて喧嘩っ早い。。。
中でも、完璧主義―品質に自信が無いものは絶対に売らないという誇りと追求心―、超ポジティブでバイタリティに溢れている点が印象的で、ビジネス成功に大きく作用したと思います。

 苦境の時ほどチャンスと捕らえ、何度でもアタックしていきます。
例えば、経営していたモーテル&レストランが火事だと聞いて、大慌てで現場に向かいます。最悪は全焼か、状況が分からないまま再建プランを必死に考え、まだ煙がくすぶる中に、建設業者を連れて現れたというのです。なんというポジティブthinking&バイタリティ!

ド根性というよりも、とにかく超ポジティブで、悲壮な感じは受けません。
いつも状態は、“On”、“Movement”、止まると死んでしまうマグロ、いや、フェニックスのようです。

 無一文の65歳でKFC創業、ダテではありません。
失敗の数だけ学んできたビジネス哲学と人生、人柄もうかがえる内容は、親近感とワクワク満載のビジネス本です。

 最後に、生まれながらのショーマン、セールスマンで、自らも広告塔のカーネルおじさんは、PR戦略に長けていました。
広告コピー It's Finger Lickin' Good 指を舐めるほど美味しい、名作だと思います。
あの匂いを思い出し、食べたくなるのは私だけ?


関連Info : KFC公式サイト カーネル物語 http://japan.kfc.co.jp/tale/

        本  ぼくのフライドチキンはおいしいよ  
       
ぼくのフライドチキンはおいしいよ           

2013/12/14

マーヴェリックス/波に魅せられた男たち (ジェイ・モリアリティ、サーファー)

原題 : Chasing Mavericks
Advantage : 情熱/勇気/絆/サーファーの魂
Key : 映画/男性/海外/海/サーフィン 

Info : DVD   ← 迫力、興奮の動画あり。   公式ファンページ  
    
マーヴェリックス/波に魅せられた男たち DVD

 伝説のサーファー、ジェイ・モリアリティを知っていますか?
これは、ジェイの熱く燃えた青春、“サーフィンを愛する魂”at サンタクルーズ、カリフォルニアのStoryです。
大迫力の波と海、サーフィンへの情熱と挑戦、それを見守る人々との絆。
全てのサーフィンLover、オーシャンLoverに捧げたい、そして、この映画を見て共に味わえるであろう感慨と興奮を分かち合いたい気持ちで一杯になります。

 幼い頃から母と二人きりのジェイは、貧しい暮らしと、生活を支えることだけに精一杯の母に気兼ねしながら育ってきました。ある日、海で溺れたていたところを、近所に住むサーファー、フロスティに助けられます。それは宝物を見つけた日、サーフィンへの憧れと、彼のヒーローで師匠となるフロスティとの出会いでした。

 サーフィンに恋する高校生のジェイは、同じ年頃では並ぶ者の無い程、その技量を真っ直ぐに伸ばしていきます。そんな時、こっそりフロスティの後をつけて、伝説のモンスターWaves=マーヴェリックスに挑んでいく男たちを見てしまうのです。
冬季の限られたチャンスにしか出会うことのできないマーヴェリックスはビル7階の高さ!もう圧巻です、自然の偉大さに驚嘆するしかありません。

マーヴェリックスにショックを受け、魅入られたジェイは、自分も仲間に入れてくれと頼みますが、フロスティは頑なに断ります。
複雑な家庭環境で育ったフロスティは、ヒトとの、父のように慕ってくれるジェイとの関係に踏み込むことを避けていて、また、家族を愛すると同時に、命の危険を冒してもマーヴェリックスを断ち切れない自分のサーファーの業に、心が迷っていたからです。
結局、唯一の理解者である妻の言葉に押され、ジェイとともに進み始めます。12週間のトレーニング課題という条件付で、肉体、精神、感情そして魂を鍛えることを伝授していきます。

 この教え、グッときました。トレーニングにひた向きなジェイの姿と共に。
自然と共に呼吸し、一体化すること。
大波に挑んでいくことだけでなく、全てを包む大自然、地球の一部である自分の存在を受け入れつつ、それを享受することこそ、サーフィンの原点です。改めて、サーフィンの楽しみに気づかされます。
 そして、原題Chasing Mavericksについて、大波を追い続ける挑戦というそのままの意味よりも、マーヴェリックスに挑戦する資格を得る、極めることを追求するサーファーの敬意と崇高な魂を表している、素敵なタイトルだなと連想しました。

 マーヴェリックが現れる決戦の日、あまりのモンスターWavesの脅威に、参加者は続々とリタイアを余儀なくされます。ジェイも仲間が見守る中、大波に飲み込まれ、命さえも心配される間一髪で状況で浮上してきます。しかし、近寄った救助艇に、“救助じゃないよ、僕のボードをくれ”と言って、再び果敢に立ち向かっていきます。
そして、とうとうマーヴェリックを制覇、16歳の勇気に誰もが驚き、心動かされたのです。

 ジェイは22歳の若さで他界します。(ダイビング事故)
サーフィンに没頭し、幼馴染との一途な愛を貫いて結婚、フロスティや仲間との絆、色濃く凝縮された短い人生を駆け抜けました。

 運命って気まぐれだ。
本当に本当にサーフィンが大好きだった、ひた向き。
22歳までの若さと純粋さは、その他のしがらみなんて無縁だった。
これがジェイを伝説のサーファーとして有名にした要因の全て、映画からはシンプルにこれだけだと感じました。
その上に、ヒトとの出会い、タイミングがリンクするということ、これは神様からのギフトなんだろう。
ジェイの場合は、この前髪を見据えていて掴み取ることができた、これが最終的に大切なことだと思います。

 溺れていた小学生のジェイは、フロスティに助けられた瞬間、劇的な何かをサーフィンに感じたでしょうか?

 最愛の妻を亡くして茫然自失のフロスティが、海の真ん中で独り、ボードに跨って何時間もプカプカと漂っていた時、ジェイがその姿を見つけて、そっと寄り添い、親ほど年上のフロスティを懸命に励ますシーンがあります。
海の生命力と静けさに包まれて、心の絆が伝わってくる感動的なシーンです。
 ジェイはこの瞬間、運命的なヒトとの巡り合いについて、間違いなく、何かを感じていただろうと思います。

 とにかく映画を、映像を見てください。心が共鳴する感じです。
サーフィンて、海って最高だ。心の絆って素晴らしい。

2013/12/13

マンデラの名もなき看守 (ジェームス・グレゴリー、マンデラ氏を見守り続けた看守)

原題 : Goodbye Bafana
Advantage : 不屈の精神/人間力/勇気/信念
Key : 映画/男性/海外/ノーベル賞/マンデラ/リーダー/南アフリカ 

Info : DVD

マンデラの名もなき看守 [DVD]


 ノーベル平和賞受賞者、南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラ氏が2013年12月05日に永眠されました。追悼の意をこめて、この映画を紹介したいと思います。 

 これは、マンデラ氏の苦難に満ちた長いアパルトヘイト闘争の中、27年にも及ぶ収監生活のほとんどを見続けてきた白人看守ジェームス・グレゴリーの手記を元に、1990年2月11日の歴史的な釈放日を掴むまでが綴られた映画です。
当時の社会情勢において、白人の視点であること、マンデラ氏に許可を得て映画化された経緯は貴重であり、政治が全てを巻き込んで家族や愛の問題に直面する時のマンデラ氏の姿、人間力が第三者の眼で語られていることに大きな意義があると思います。

 ジェームスは現地のコサ語や習慣に親しんで育ってきた過程で、黒人の幼馴染バファナとの関係や社会情勢の変化に気づき、受け入れるしかない心の葛藤を忘れようとして生活していました。ある時、コサ語が解るということでマンデラ氏の担当看守、つまりスパイに抜擢されることから始まります。

 白人と黒人、看守と囚人という立場から、始めは言葉を交わすことも少ないままに時は経過していきます。それでも日々の態度や考え方に接し、心に敬意と親しみが芽生え始めたました。そんな矢先、コサ語で知りえたマンデラ氏の息子のちょっとした情報を何気なく報告すると、数日後、その息子が疑惑の事故で死亡してしまいます。
ジェームスが罪悪感からお悔やみを述べると、苦悩に打ちひしがれた様子のマンデラ氏は、
「黒人と白人が平等な権利を持つ国が実現すると素晴らしいと思わないか?君は自由憲章を知らないのか?」と言います。
弁護士らしい答えですが、自分の信念と行動を貫くことで多くの同士が殺され、自分の一番大切な人までも失う心境は。。。アパルトヘイトに対する嫌悪と自由平等を実現するための闘争、誰かを憎んで人殺しをする戦争とは明らかに異なるという信念、人間性が現れている言葉だと思います、こんな最悪の闇の中においても。
それよりも、その言葉を聞いた時のジェームスの心は。。。。

 後年、ジェームスは何かとマンデラ氏にも気にかけてもらっていた自分の息子を、事故で亡くします。自分のスパイ行為のために命を失った人達、その家族の痛みを身をもって知り、後悔し、絶望して、マンデラ氏に真実を打ち明ける手紙を出します。
それでもマンデラ氏は、「知っていたよ。君は職務を遂行しただけじゃないか。」と責めませんでした。

 最後に、釈放されるマンデラ氏をテレビで見ながら、自由憲章を開くジェームスの姿で映画は幕を閉じます。

 監禁された塀の中で、来る日も来る日も新たな苦難に絶えるだけ。そんな状況の中でどれほど政治的信念=大儀、家族や愛、社会の理不尽さについて考えたことでしょう。
光を見ていた、光を失わなかったマンデラ氏の心は優しくて、とても強い。他の人には真似できない、世界の賞賛に値する素晴らしい生き方だと思います。
ただ、彼がこの人生を望んだかというとそうではなく、時や社会がそうさせたのであって、ずっと家族と共に楽しく過ごすような別の人生もあったのかと思うと悲しいです。

 今でも世界では人種や民族による差別や悲劇は続いています。
罪無き子供達までもが犠牲になる残酷なニュース映像を見ると心が痛み、人間の醜さや社会の不条理さに怒りを感じながら、それに勝つことができない無力さで、眼を背けたくなります。
 世界中で自由憲章を実現することは簡単ではないけれども、マンデラ氏の生き方を尊敬し、思い出すことは大切なことだと思います。
 眼を背けずに、光を見続けた。そして、その深遠な闘争に一生を捧げたマンデラ氏の信念と意思が、多くの人々に引き継がれることを願ってやみません。

関連Info : 映画 インビクタス/負けざる者たち Invictas    本 インビクタス 負けざる者たち

                     本 自由への長い道 ネルソン・マンデラ自伝  ← 映画化決定、近日公開


         

2013/12/12

愛しのフリーダ (フリーダ・ケリー、ビートルズを支えた誠実な仲間)  

原題 : GOOD OL' FREDA
Advantage : 誠実/ヒトの品格/友情/ビートルズの青春
Key : 映画/ドキュメンタリー/女性/海外/アーティスト/ビートルズ 

Info : 映画公式サイト


 ビートルズがメジャーになる前から解散までの11年間を、彼らと共に駆け抜けたフリーダという女性のドキュメンタリーです。裏方に徹したもう一人のメンバーとも言えるフリーダが、回想しながらトツトツと、時には幸せそうに語るシーンを基軸に、当時の映像と音楽を交えながらストーリーは進みます。
“彼女の眼”から語られるメンバーの真の姿、素のままの顔が、今までに知られていなかったエピソードや葛藤と混ざりながら鮮やかに浮かび上がり、ビートルズファンには新たな感慨を与えるのではないでしょうか。

“彼女の眼”とは?誠実、思慮深くて、Happyパーソンで、そしてトテツモナク頑固というフリーダの人柄が、どのシーンからも絶対的に感じ伝わってきます。その眼を通じて語る真実が全てで、そして、これはフリーダの半生、生き方を映す映画でもあると思いました。
今までお金や名声には興味を示さず、暴露本や秘蔵コレクション等は一切出したことがない、考えたこともなかったフリーダ。ビートルズメンバーとのファミリー的な愛やメンバーの心を、唯一大事に守ってきたフリーダの。

 それが何故この映画で沈黙を破ったのかと考えると、最初から最後まで、今でもビートルズが大好きで、大ファンであることに誇りを持っていたからなんじゃないかと思いました。
始まりは一ファンとしてビートルズに関わり、ヒョンなことから何時も何所でも一緒に過ごすことになった奇遇な、ジェットコースターのような時代の体験を、心の箱から出して全てのファンと共有したかった、伝えて後世まで残したかったから。

 どこまでも誠実でフェアー、そして愛しい頑固者の意思、生き方を見ました。
ジェットコースターで夢世界に連れて行ってもらったのに、自分の信じるものを見る眼を持ち続けて。
こんなヒトもいるのですね。

フリーダがファンクラブのリーダーで良かった。
ありがとうビートルズ!ありがとうフリーダ!!って叫びたい。

(そして早速ビートルズのTシャツを探して買いそうな自分。。。。)