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2013/12/29

ガウディの影武者だった男 (ジュジョール、モデルニスモ建築家)

Advantage : 情熱/幸福の意味/挑戦
Key : 本/男性/バルセロナ/モデルニスモ/ガウディ/ジュジョール 

Info :

ガウディの影武者だった男―天才の陰で忘れ去られたバルセロナ建築界の奇才


 スペイン、カタルーニャ地方のモデルニスモ建築家、ジュセップ・マリア・ジュジョール・ジベルト。
ガウディより27歳若い1827年生まれのジュジョールは、建築学校の学生時代にガウディと出会い、才能を見出された“色彩の芸術建築家”です。ガウディが最も信頼した協力者です。

 タイトルから、ガウディの名の下に表舞台に出られなかった若き才能や葛藤、師弟関係をイメージしていましたが、これは異なる才能を認め合った2人の自由な創作、刺激しあった造形と共同作業について書かれたものです。
ガウディの、時にはモデルニスモ時代の担い手ドメネクやカダファルクの作品と比較しながら、ジュジョールの世界を探訪していくうちに、その独創的な魅力に取り込まれてしまいます。
 特に前半は直接的な人物像よりも、ジュジョールの眼差しから学術的に検証、考察される作品の記述が多く、建築分野に関連して、芸術絵画、デザイン、カタルーニャ文化と歴史に興味がある方にも読みごたえがあると思います。

 ガウディの代表的作品と認識されている建築の中には、ジュジョールによる創作部分が数多く存在し、光っています。
 サグラダファミリアの天蓋・カテドラル背面の壁画
 カサ・バトリョの鮮やかな外壁
 グエル公園の波状ベンチ、カサ・ミラのバルコニー装飾等です。
ガウディが自分に足りないと感じていた色彩感覚や独創性をエッセンスとして付加し、建築作品全体のバランスを補強して完成度を高めるための必要なファクターであり、制作者独自のセンスと采配に任されていた“遊び”のパーツです。
大家のガウディが口を出すことも無く、信頼と協力で成り立っている関係、ジュジョールは協力者なのです。

 この本を読んで、3つのポイントに注目しながら2人の作品を見ていくと、気づく点が多く、面白いと思いました。
異なる才能、共同作業中のインスパイア「ガウディの中のジュジョール」「ジュジョールの中のガウディ」、其々の私生活が作品に与える影響についてです。

2人の才能とは?

ガウディ
 幼い頃から自然を熱心に観察していた。モチーフに海、水、岩山などが多い。
作品は想像力の産物ではなく、冷静な観察力によって見出した形態がベース。
全体的に計算されつくした、完全主義の美。

ジュジョール
 観察して、まず描いてみることを常としていた。
瞬間のインスピレーション、心象を自分の手を動かすことで心の中に刻み込もうとするよう。即興的。
想像力の産物、個々に芸術作品の1つとしての意味が高い。大胆。

ジュジョールらしい作品とは?
 1910-20年代にかけて、バルセロナ郊外のサン・ジュアン・デスピという小さな町の専属建築家として没頭した、76もの作品に見ることができます。
1909年の“悲劇の一週間”(労働者階級の暴動)以降、資金潤沢で派手好みのブルジョワのパトロンがなりを潜め、カタルーニャ主義の強い表現が牽制された社会、政治、経済状況下のバルセロナから離れた、自由な創作時代です。
 ここでの代表作にマシア・ネグラ(シュールリアリズム的な絵画を自由奔放に描いている)、ラ・クレウ(特殊な十字架の形を持つ塔、卵の塔と呼ばれている)等があります。
小規模で資金の限られた制作は、新たなアイデアや素材(身近な生活用具等)を見出し、思う存分にコダワリを貫くことができた、楽しさを見ることができます。

 ブルジョワ趣味の仕事を請け負う処世術と自分の理想の間で悩み、次には対照的な、本来貧しい庶民の心の拠り所である“神の家=サグラダファミリア”の理解と実体化、重責に苦しんだガウディは、生涯独身で、最後の時を神の精神に捧げて暮らしました。

 一方、庶民文化に根ざした建築美を追求したジュジョールは、状況によって奇抜な才能をコントロールしたり、父親と同じように教鞭にも立つ社会性にも恵まれており、愛に満ちた家庭生活を送りました。

 天才、富と名声、愛、、、、幸福の形について考えさせられます。

 とにかく、ガウディとジュジョール作品の写真、実物を提示しないと、内容と感情が旨く表せてない気がします。サン・ジュアン・デスピにずっと行ってみたいと思っていましたが、本当に探訪しなくてはと思いました。

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