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Viva La Vida ビヴァ ラ ビダって、「今を生きる」 を感じること。 実在人物の軌跡、考え、心、光と闇に触れて感じるスペース ☆ 私的セレクト図書館。 

2013/12/29

海を飛ぶ夢 (ラモン・サンペドロ、尊厳死を選んだ一般人)

原題 : MAR ADENTRO
Advantage : 命、病気について/心の弱さ、闇について/幸福の意味
Key : 映画/男性/海外/尊厳死 

Info :    
     

海を飛ぶ夢 (翔年たちへ)


 25歳の事故以来、30年もの間、首から下が麻痺した生活を送りながら、自らの生、自由、幸福について考え続けて出した結論は、尊厳死でした。
 これは実在の人物、ラモンによる手記と記録映像を元に作成され、スペイン映画らしく、生身の人間の根源を直視したテーマが、心を抉るように迫ってきます。
人間の老い、性、妬み等のドロドロした隠したい部分、その中でも尊厳と死は重く、これからの高齢化社会、福祉問題を生きていく上でも避けられない大きなテーマでしょう。
 今回、“誰の心にも棲むもの”として切実に、実話として真っ直ぐにとらえ、“内なる海”(原作タイトル“MAR ADENTRO”の直訳)を映画表現として挑んだ、アメナーバル監督(スペインの若きヒッチコックと呼ばれる)と、名優ハビエル・バルデムのコンビに、拍手を送りたいと思います。
涙が止まりませんでした。

 ラモンは25歳の時、海の浅瀬に飛び込んで脊椎を損傷し、首から下が麻痺した寝たきりの生活を送っていました。その後、暫くは恋人を拒絶し、将来を悲観して苦しみますが、そのうちに、家族や周りの人々の温かい理解と助け、生来の明るい性格で、毎日を楽しく過ごそうと努力していました。そんな生活も20年以上経った頃、尊厳死を求めて裁判をおこすのですが、敗訴します。最後には理解者の協力を得て、自ら尊厳死を全うします。協力者の誰も罪に問われないように、一節毎に分担して準備をし、最後にビデオにメッセージを託してから死を実行しました。

 ラモンは、周りの友達に囲まれておしゃべりしたり、詩を創ったり、毎日が楽しいけれど、このまま生き続けることは幸せではない、心は自由でも体を伴わずに自己実現ができない、命を終わらせることの権利を主張していました。
 濃いカトリック色を背景とするスペイン社会では、障害者や弱者への救済や受け止め方は、日本とは異なって温かく、深く根付いていると感じ、それが一層問題を複雑にしています。
それゆえ、ラモンが何度も繰り返し言っているとおり、居心地は悪いものではなかっただろう、自己の生の中で求めるものを実現できるか、生きることの権利=生きることは義務ではない、について考え抜いた上での結論だっただろうと思います。

 「体はベッドに縛り付けられているけど、心は、精神は自由だ」と言っていて、その視覚的表現として、ラモンに扮する男優ハビエル・バルデムが、窓を開け放ち、バサバサと広い世界に飛んでいく映像があります。まるでピーターパンと空に飛び出す子供たちのように、その目には喜び、好奇心が映り、自由に空を、海の上を飛び回ります。
このシーンが印象的で好きです。現実への絶望感を哀しく、美しく、スペイン映画的に表していると思います。

 最後に、実際に自らが命を絶つ直前のビデオレターが流されます。
周りの人々への愛と尊厳死を選んだ主張が、メッセージとして見る者に語りかけます。

貴方はコレを見たとき、どう感じるでしょうか。

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