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Viva La Vida ビヴァ ラ ビダって、「今を生きる」 を感じること。 実在人物の軌跡、考え、心、光と闇に触れて感じるスペース ☆ 私的セレクト図書館。 

2014/01/01

建築家、走る (隈研吾、建築家)

Advantage : 挑戦/情熱/マネージメント力
Key : 本/男性/日本/建築/歌舞伎座 

Info :

 建築家、走る

 建築家、隈研吾さんがフランクに語りかけてくれる自伝的建築哲学論です。
ずばり、隈さんの人間力が秘められた本だと思います。
2013年春に完成した新歌舞伎座“GINZA KABUKIZA”の建て替えを手掛ける等、世界を駆け巡って活躍する隈さんの歴史、建築家としての経験と考察を自己哲学として確立していくプロセスを、社会、文化、経済情勢やニーズ、ミッションとして関連付けながら、熱く、そして客観的な両方の視点から語っています。

新歌舞伎座”、国内地方建築に集中していた時代の初期作品“石の美術館”にまつわる経緯や学術的記述には特に興味を引かれ、感銘を受けました。
それ以上に、人間クマケンゴの芯にスポットライトが当てられ、浮き彫りになる「弱いぼく」の姿と、「自称ニヒリスト」の捻くれた思考が顕にされていることが面白く、そのフィルターを通して改めて作品を感じ、強く魅せられました。

印象深かった隈さんの歴史、言葉を、幾つか挙げてみたいと思います。

 建築家になりたいと思ったのは、1964年小学4年生の時、丹下健三作品の代々木体育館に足を踏み入れて、美しい屋根の曲線を舐めるようにして降り注ぐ光を見た時だそうです。
・・・天職、人並みはずれた創造の才能って、運命の啓示ってものがあるのかなと思いました。

 そもそも自分を永久に幸せにしてくれる資産なんてものは無い。
ぼくも諦めを知ってから、人生も、建築も、本当に面白くなりました。

 反20世紀的な建築(反アメリカ的建築)を目指すこととは、その場所でしかできない、際立って特別な建築を創ること。
右手の機能を失ってから、その場所が発する声や気に耳をすませたり、眼を凝らしたりすることができるようになった。
・・・スケッチ力に優れ、自信を持っていた右手に怪我を負った時、あえてリハビリをしないまま、不自由さを選んだ。頭の中の思考や技術より、感覚、感性が重要だと改めて気づいたから。

 (東日本大震災の)復興のための建築は、「これからの生き方」を考えるということ。
次の社会へと転換させるアイデアでなくてはならない。

 日本人の自然観で自分たちの歴史を生きる。
作り続けて、壊れ続けてを繰り返す。つまり、「死に続ける建築」。


 分刻みのスケジュールで世界中のコンペに走り、次のステージでは、施主/クライアントや現場と折り合いながら解決策を探っていくしかないと、舞台裏の状況や心境を正直に吐露している部分もあります。
 建築家に求められているものは、この困難な時代のソリューションであると自覚し、どんなことがあろうとも、挑戦と創造性は基本楽しさであるということ、全てを受けとめている強さを感じます。
 世界的な視野、マネージメント力、求心力に優れていなければ、天才の創造力や知識を表舞台で発揮し、現世界の第一線を走り続けることはできないということを、身を持って示してくれているのだと思います。

 「何かが生まれるプロセスを、真剣な思いの人たちと共有する楽しみ」
これが一番大切なこと、バイタリティの源なんだろう。
人間として、クリエイターとして魅力的な言葉だと思います。


隈さんの最新作品(2013年12月現在)。
表参道のSunny Hillsパイナップルケーキ屋 さんに行ってみた。#隈研吾#sunny hills#写真
http://www.sunnyhills.co.jp/news.php



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