add

Viva La Vida ビヴァ ラ ビダって、「今を生きる」 を感じること。 実在人物の軌跡、考え、心、光と闇に触れて感じるスペース ☆ 私的セレクト図書館。 

2014/07/16

幸せへのキセキ 動物園を買った家族の物語 (ベンジャミン・ミー、ジャーナリスト)

原題 : We Bought a Zoo
Advantage : 幸福の意味/命、病気について/挑戦したくなる/頑張る気力UP/心温まる
Key : 本/映画/男性/海外/ジャーナリスト/ダートムーア動物学公園

Info :    映画

  幸せへのキセキ [DVD]

 イギリス人ジャーナリストのベンジャミン・ミーが、突如、破綻した動物園を買い取ってから、約1年をかけて2007年7月に新規オープンを果たすまで、夢のような真実の物語。
ある時に運命的なキーが幾つか現れて、それを掴み取ろうとする意思と決断が重なった時、人生は劇的に変わる、変えることができるということを証明するような、お伽噺のようなストーリーだと思います。
経験も知識もなく、いきなり荒廃した動物園を買って園長となってしまったベンジャミン本人が、戸惑い、驚き、興奮しながら、自身のジャーナリストとしての眼を通した現実を書き綴っていくストーリーは読みやすく、客観的な面もありつつ、心温まるヒューマンストーリーとして完成されています。
また、動物の生態観察についても、一般の、いわゆる素人目線での感動が生き生きと描かれています。

ベンジャミンの場合のキーは、ロンドン郊外で暮らしていた父親が亡くなって、母親が余生を過ごす新たな家を探していた機会、妻のキャサリンに脳腫瘍が見つかった運命的な出来事。そんな時に、動物園売り出し処分の不動産広告を見つけた妹が“兄さんの夢のシナリオよ”と送ってきたという、3つのリンクです。

 生きる意味、家族の愛について考えて悩んだ時、ただ一般の動物好きのジャーナリストが惹かれたもの、巡り合ったのが、動物園という別世界での生活と挑戦だったという感じです。
それを可能にしたのが家族の結束~ロンドン郊外の家を売り払って同居した元気な母親、4人の兄弟とその家族、妻キャサリンと2人の子供達と、まさに一丸となって進むこと~、それから、ベンジャミンの好奇心旺盛、冒険に憧れる少年のような性格によるところが大きいと思いました。
引っ越して4日目にジャガーが脱走したり、動物園運営の細かな規則や資金繰り、学会との軋轢、スタッフとの信頼関係など、問題は山積みでしたが、家族や友人と力を合わせて一つ一つクリアしていきます。

 約1年後に新生ダートムーア動物学公園をオープンするに至りますが、残念ながらその日を待たずに最愛の妻キャサリンが亡くなってしまいます。
脳腫瘍の症状が進行するにつれ、言葉と体の自由が奪われていく最後の日々の中で、どんな状態でも大好きなキャサリンはキャサリンで、2人で過ごす時間がとても嬉しい様子。ロンドンでの多忙で、華やかなジャーナリストとしての生活では分かち合えなかった和やかな気持ちと親密な時間に感謝する気持ち。キャサリンの余命を子供達に告げる時の気持ちと、長男マイロの言葉“ぼくは泣きたくない。パパのために強くなりたいんだ。”に自分の家族がダブり、心が痛くなりました。
愛する人を失う絶望は誰もが同じで、ベンジャミンも仕事への無力感、何を見てもキャサリンを思い出してしまう悲しみに沈みます。
ただ、最後まで希望を持ち続け、希望を共有して生きてきたという事実は、キャサリンにも、周りの家族にも、何にも変えられないものであったと思います。そのために、未知の世界へ進む、生活を完全に転換する勇気を持ち、行動したことを尊敬します。

 現在、動物保護と自然環境学習を目的に掲げ、多くの人が集うことを目指すダートムーア動物学公園は、異業種からの視点とアイデアも盛り込んで挑戦を続けているようです。
2006年に動物園購入に興味を持った40歳くらいの一人の男性が、翌2007年に動物園の園長となって出発する経緯は、ある程度の資金とチャンス、身を投じる勇気があれば、他の人でも実現できたかもしれない物語で、遠い世界や時代の話ではありません。だからこそ、人間味やシンパシーをを感じ、実際に行動する勇気を持った稀な人、作者ベンジャミン、関係者を応援したい気持ちになるのだと思いました。

この本が原作となった映画では、舞台がアメリカだったり、妻キャサリンが亡くなってから動物園に住むことを決める等、多少の違いがあるようです。でも、田舎の風景や動物達の迫力あるビジュアルがあって、こちらもとても魅力的な作品だと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿