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Viva La Vida ビヴァ ラ ビダって、「今を生きる」 を感じること。 実在人物の軌跡、考え、心、光と闇に触れて感じるスペース ☆ 私的セレクト図書館。 

2013/12/17

イルカと墜落 (沢木耕太郎、作家/ルポライター)

サブタイトル : 沢木氏、ブラジルで危機一髪
Advantage : 未知の世界/幸せの意味/社会の豊かさ
Key : 本/TV番組/男性/日本/ライター/冒険/環境問題 

Info : http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167209155

        NHKスペシャル 2003年6月22日放送
       沢木耕太郎 アマゾン思索紀行  「隔絶された人々 イゾラド」     



 2001年、NHK番組の取材のために初のブラジルへ、さらに未開のジャングルへと旅立った沢木氏。
ミッションは、文明と未接触のイゾラド(=インディオ)の取材です。
そして、何とジャングルへ向かうために乗り込んだセスナが墜落してしまうのです。

 “窓の外の熱帯雨林がぐんぐん近づいてくる。どうやらこの飛行機は墜ちるらしい”
そして、墜落の瞬間、咄嗟に思ったことは、“マジかよっ”。

 家族や自分の運命のことではなく、取材同行スタッフの口癖“マジ”だったことに、本人も後から驚いたようです。小説のような事件に直面すると、アッという間で、理性的に考える余裕なんて無いのかもしれません。セスナは大破し、死傷者が出なかったのが不思議な程の大事故だったのに、とにかく、全員軽症で何よりだと思いました。

 こんな奇跡の事件の当事者となった沢木氏、相変わらず淡々と、沢木ワールドで語っていきます。生と死は背中合わせ、死は直ぐ隣にあるもの、自分は今までやりたいことをたくさんやってきたから、死への恐怖や生への執着はそんなに無いと気づいた、と経験を振り返っています。

 この物語には、もう一人のKeyパーソンがいます。
ブラジルのジャングル奥地には、未確認、未接触のイゾラド(=インディオ)が相当数いるそうで、ブラジル政府の組織によって調査、管理されています。
その組織のリーダー、ポスエロ氏です。強烈なカリスマ、アクション漫画のヒーローのように豪快で明るく、不屈の精神の持ち主のようで、人間力にグイグイ引き込まれます。

 下記の言葉は、印象的でした。
ポスエロ氏が彼らとの接触、失敗と後悔の中で考え、たどり着いた信じるべきもの。身を尽くすべき理由なのでしょう。
幸せとは何か?自分の立場は?自分がやるべきことは?自分たち文明人は、上から目線で助けたり、守ってあげるヒーローでも、正義でもない。

ポスエロ氏の言葉:

 イゾラドが、イゾラドとして生まれて、そのまま自然に死んでいく。それが一番美しいことだ。
僕はその美学、理想を実現するためだけの理由で、僕の仕事を、任務を行っている。
できるだけ文明に触れさせないことだ。彼らが、あるがままにジャングルで楽しく暮らすことだ。

 イゾラドの数は減少していて、やがて絶滅するのは時間の問題だ。
僕らは、それをできるだけ引き伸ばしているにすぎない。
だって白人がここにやって来てからの所業を考えてごらん、僕らは最後の時間をもらって、彼らにできることをするしかないんだ。


 私はこの取材から完成した番組
沢木耕太郎 アマゾン思索紀行  「隔絶された人々 イゾラド」
を観ていないのですが、それは沢木氏のこんな語りで始まり、終わるそうです。
取材の裏舞台であるこの本の、ポスエロ氏の言葉を重ねるとき、魅惑的なフレーズは一層深みを帯びて響きます。
幸せとは何だ、考えさせられます。

 不思議な話を聞いたのだ。
ある時、2人のイゾラドが忽然と現れた。
近隣数百キロ範囲のイゾラドとは異なる言語と文化を持ち、彼らは何者か、何所から来たのか、まさに忽然と現れたのである。

(アウレとアウラと名付けられた2人の話し声が風に乗って聞こえてくる)
しゃべっているね。
そうだね。あの声が消える時、あの1つの文化も地球上から消えて亡くなるんだ。

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